いじめ防止等のための基本的な方針
令和4年4月
東松山市立桜山小学校
1 はじめに
○いじめは、いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心
身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身
体に重大な危険を生じさせる恐れがある。
○本校では、平成25年3月に東松山市(以下「市」という。)教育委員会が作成
した「いじめ防止プログラム」を活用して「いじめゼロ」を目指し、日々の教育活動
に取り組んでいるところである。
○この「東松山市立桜山小学校いじめ防止等のための基本的な方針」(以下「桜山
小基本方針」という。)は、これまでの取組をさらに実効的なものとし、児童の尊厳
を保持する目的の下、市、市教育委員会、市立小・中学校、家庭、地域住民その他の
関係者と連携し、いじめ問題の克服に向けて取り組むよう、いじめ防止対策推進法
(平成25年法律第71号。以下、「法」という。)第12条の規定に基づき、国・
県・市の基本的な方針を参酌し、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に
推進するために策定するものである。
2 いじめに対する基本的な認識
(1)いじめの定義
○「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該
児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行
為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象とな
った児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。(法第2条)
○具体的ないじめの態様は、以下のようなものがある。
①冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる
②仲間はずれ、集団による無視をされる
③軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする
④ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする
⑤金品をたかられる
⑥金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする
⑦嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
⑧パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる 等
これらの「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に
警察に相談することが重要なものや、児童の生命、身体又は財産に重大な被害が生
じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。
(2)いじめの理解
○いじめは、どの子供にも、どの学校でも、起こりうるものである。とりわけ、嫌がら
せやいじわる等の「暴力を伴わないいじめ」は、多くの児童が入れ替わり被害も加害
も経験する。また、「暴力を伴わないいじめ」であっても、何度も繰り返されたり多
くの者から集中的に行われたりすることで、「暴力を伴ういじめ」とともに、生命又
は身体に重大な危険を生じさせうる。
○国立教育政策研究所による調査(平成25年7月「いじめ追跡調査2010-201
2」)によれば、暴力を伴わないいじめ(仲間はずれ・無視・陰口)について、小学
校4年生から中学校3年生までの6年間で、被害経験を全く持たなかった児童生徒は
1割程度、加害経験を全く持たなかった児童生徒も1割程度であり、多くの児童生徒
が入れ替わり被害や加害を経験している。
○加えて、いじめの加害・被害という二者関係だけでなく、学級や部活動等の所属集団
の構造上の問題(例えば無秩序性や閉塞性)、「観衆」としてはやし立てたり面白が
ったりする存在や、周辺で暗黙の了解を与えている「傍観者」の存在にも注意を払
い、集団全体にいじめを許容しない雰囲気が形成されるようにすることが必要であ
る。
(3)いじめの防止等に関する基本的な考え方
①いじめの未然防止
○いじめは、どの子供にも、どの学校でも、起こりうることを踏まえ、より根本的ない
じめの問題克服のためには、全ての児童を対象としたいじめの未然防止の観点が重要
であり、全ての児童を、いじめに向かわせることなく、心の通う対人関係を構築でき
る社会性のある大人へと育み、いじめを生まない土壌をつくるために、関係者が一体
となった継続的な取組が必要である。
○このため、学校の教育活動全体を通じ、全ての児童に「いじめは決して許されない」
ことの理解を促し、児童の豊かな情操や道徳心、自分の存在と他人の存在を等しく認
め、お互いの人格を尊重し合える態度など、心の通う人間関係を構築する能力の素地
を養うことが必要である。
○いじめの背景にあるストレス等の要因に着目し、その改善を図り、ストレスに適切に
対処できる力を育む観点が必要である。加えて、全ての児童が安心でき、自己有用感
や充実感を感じられる学校生活づくりも未然防止の観点から重要である。
○これらに加え、あわせて、いじめの問題への取組の重要性について市民全体に認識を
広め、家庭、地域と一体となって取組を推進するための普及啓発が必要である。
②いじめの早期発見
○いじめの早期発見は、いじめへの迅速な対処の前提であり、全ての大人が連携し、児
童のささいな変化に気付く力を高めることが必要である。
○このため、いじめは大人の目につきにくい時間や場所で行われたり、遊びやふざ
けあいを装って行われたりするなど、大人が気付きにくく判断しにくい形で行われる
ことを認識し、ささいな兆候であっても、いじめではないかという疑いを持って、早
い段階から的確に関わりを持ち、いじめを隠したり軽視したりすることなく積極的に
いじめを認知することが必要である。
○いじめの早期発見のため、定期的なアンケート調査や教育相談の実施、電話相談窓口
の周知等により、児童がいじめを訴えやすい体制を整えるとともに、家庭、地域と連
携して児童を見守ることが必要である。
③いじめへの対処
○いじめがあることが確認された場合、学校は直ちに、いじめを受けた児童やいじめを
知らせてきた児童生徒の安全を確保し、いじめたとされる児童に対して事情を確認し
た上で適切に指導する等、組織的な対応をすることが必要である。また、家庭や教育
委員会への連絡・相談や事案に応じ、関係機関との連携が必要である。
○このため、教職員は平素より、いじめを把握した場合の対処の在り方について理解を
深めておくことが必要であり、また、学校における組織的な対応を可能とするような
体制整備が必要である。
④家庭や地域との連携
○社会全体で児童を見守り、健やかな成長を促すため、学校関係者と家庭地域との連携
が必要である。例えばPTAや地域の関係団体等と学校関係者が、いじめの問題につ
いて協議する機会を設けるなど、いじめの問題について家庭、地域と連携した対策を
推進することが必要である。
○また、より多くの大人が子供の悩みや相談を受け止めることができるようにするた
め、学校と家庭、地域が組織的に連携・協働する体制を構築する。
⑤関係機関との連携
○いじめの問題への対応においては、例えば、いじめる児童に対して必要な教育上の指
導を行っているにもかかわらず、その指導により十分な効果を上げることが困難な場
合などには、警察、児童相談所や医療機関等の関係機関との適切な連携が必要であ
り、そのため、平素から、関係機関の担当者の情報交換や連絡会議の開催など、情報
共有体制を構築しておくことが必要である。
○例えば、教育相談の実施に当たり必要に応じて、医療機関などの専門機関との連携を
図ったり、法務局など、学校以外の相談窓口についても児童へ適切に周知したりする
など、関係機関による取組と連携することも重要である。
3 いじめの防止等のための対策
(1)いじめ防止基本方針の策定
桜山小学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、学校
の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方
針を定めるものとする。(法第13条)
○桜山小学校は、法第13条に基づき、国のいじめ防止基本方針又は埼玉県及び東松山
市の「基本方針」を参考にして、自らの学校として、どのようにいじめの防止等の取
組を行うかについての基本的な方向や取組の内容等を「桜山小学校いじめ防止基本方
針」(以下「学校基本方針」という。)として、いじめの防止等のための具体的な実
施計画や実施体制を定める。
○定める際の留意点は、以下のとおりである。
ア 策定に当たっては、自校の課題を洗い出し、教職員や学校関係者の認識の共有
を図る。
イ 「いじめの防止」、「早期発見」、「いじめに対する措置」に関する具体的な手
立てや年間の計画を組織的、計画的に実行できるよう盛り込む。
ウ 児童や家庭・地域も巻き込みながらの策定や説明に努める。
エ 法第22条に基づく組織を、学校基本方針に定めた取組等を実行する中核の組
織として位置付ける。
オ 未然防止の取組には、学校の全教育活動に関わることを意識し、全教職員の児
童の様子や変化等を見抜く力を高めるための方策を盛り込む。
カ 未然防止の観点からも、いじめに関するアンケート調査を年間複数回実施する。
キ 年間の取組をPDCAサイクルにより検証し、基本方針を見直すことができる
ようにする。
ク 11月が東松山市におけるいじめ根絶強調月間であることから、児童を主体と
した取組を11月に実施する。
ケ 重大事態への対処については、東松山市基本方針を参考に迅速な対応ができる
ようにする。(重大事態が発生した場合のシミュレーションを全教職員で行って
おく。)
コ 学校基本方針により、個々の教職員がそれぞれの教育活動の中でいつ、何をど
のようにすべきかが分かり、保護者や地域がどのような協力をし、学校として児
童をどのように育てようとしているかが分かるようにする。
(2)学校におけるいじめの防止等の対策のための組織
学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該
学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係
者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。(法第
22条)
○桜山小学校は、法第22条に基づき、いじめの防止、早期発見及び対処等に関する措
置を実効的に行うため、組織的な対応を行うための中核となる常設の組織を置く。
○この組織は学校基本方針に基づくいじめの防止等に関する取組を実効的に行う際の中
核となる組織であり、実際にいじめ若しくはいじめと疑われる事案が発生したときの
事実確認や重大事態が起きたときの調査をする組織の母体となるものである。
○この組織の構成員には、管理職、主幹教諭、教務主任、生徒指導主任、特別支援コー
ディネーター、教心教相主任、養護教諭から充てる。個々の事案により、学級担任や
学年主任が参加可能とするなど柔軟な組織とする。また、必要に応じて、心理や福祉
の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者、PTA、地域の方など外部専門家等
が参加しながら対応することにより、より実効的ないじめの問題の解決に資するよう
工夫する。
○当該組織の具体的な役割は、以下のとおりである。
ア 学校基本方針に基づく取組の実施や具体的な年間計画の作成・実行・検証・
修正の中核としての役割
イ いじめの相談・通報の窓口としての役割
ウ いじめの疑いに関する情報や児童の問題行動に係る情報の収集と記録、共有
を行う役割
エ いじめの疑いに係る情報があった時には緊急会議を開いて、いじめの情報の
迅速な共有、関係のある児童への事実関係の聴取、指導や支援の体制・対応方
針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施するための中核として
の役割
(3)学校におけるいじめの防止等に関する措置
ア いじめの防止
○いじめはどの子供にも起こりうるという事実を踏まえ、全ての児童を対象に、
いじめに向かわせないための未然防止に取り組む。
○未然防止の基本として、児童が心の通じ合うコミュニケーション能力を育み、
規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加・活躍できるような授業づくりや
集団づくりを行う。
○集団の一員としての自覚や自信を育むことにより、いたずらにストレスにとらわ
れることなく、互いを認め合える人間関係・学校風土をつくる。
○教職員の言動が、児童を傷つけたり、他の児童によるいじめを助長したりするこ
とのないよう、指導の在り方に細心の注意を払う。
イ 早期発見
○いじめは大人の目のつきにくい時間や場所で行われたり、遊びやふざけ合いを装
って行われたりするなど、大人が気付きにくく判断しにくい形で行われることが
多いことを教職員は認識し、ささいな兆候であっても、いじめを隠したり軽視し
たりすることなく、いじめを積極的に認知することが必要である。
○日頃から児童の見守りや信頼関係の構築等に努め、児童が示す変化や危険信号を
見逃さないようアンテナを高く保つ。併せて、学校は定期的なアンケート調査や
教育相談の実施等により、児童がいじめを訴えやすい体制を整え、いじめの実態
把握に取り組む。
ウ いじめに対する措置
○学校の教職員がいじめを発見し、又は相談を受けた場合には、速やかに、学校い
じめ対策組織に対し当該いじめに係る情報を報告し、学校の組織的な対応につな
げなければならない。
○教員は、ささいな兆候や懸念、児童からの訴えを抱え込まずに、又は対応不要で
あると個人で判断せずに、直ちに全て当該組織に報告・相談をする。すなわち、
学校の特定の教職員が、いじめに係る情報を抱え込み、学校いじめ対策組織に報
告を行わないことは、法第23条第1項の規定に違反し得る。
○各教職員は、学校の定めた方針等に沿って、いじめに係る情報を適切に記録し
ておく必要がある。
○学校いじめ対策組織において情報共有を行った後は、事実関係の確認の上、組織
的に対応方針を決定し、被害児童を徹底して守り通すとともに加害児童に対して
は、当該児童の人格の成長を旨として、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導
する。
○いじめられた児童の立場に立って、いじめに当たると判断した場合にも、その全
てが厳しい指導を要する場合であるとは限らない。例えば、好意から行った行為
が意図せずに相手側を傷付けたが、すぐに加害者が謝罪し教員の指導によらずし
て良好な関係を再び築くことができた場合等においては、学校は、「いじめ」と
いう言葉を使わず指導するなど、柔軟な対応による対処も可能である。ただし、
これらの場合であっても、法が定義するいじめに該当するため、事案を法第22
条の学校いじめ対策組織へ情報共有することは必要となる。
これらの対応について、教職員全員の共通理解、保護者の協力、関係機関・専門
機関との連携の下で、次の点に留意して取り組む。
(ア)いじめている子供への指導
いじめの内容や関係する児童について十分把握し、人権の保護に配慮しながら、
いじめが人間の生き方として許されないことを理解させ、直ちにいじめをやめさ
せる。いじめの内容によっては、警察等との連携を図る。
(イ)いじめられている子供への支援
「いじめられる側にも問題がある」という考え方で接することのないように留意す
る。そこで、本人のプライドを傷付けず、共感的態度で話を親身に聴く。また、
日頃から温かい言葉掛けをし、本人との信頼関係を築いておく。
(ウ)周りではやし立てる子供への対応
はやし立てることなどは、いじめ行為と同じであることを理解させる。
また、被害者の気持ちになって考えさせ、いじめの加害者と同様の立場にあるこ
とに気付かせる。
(エ)見て見ぬふりをする子供への対応
いじめは、他人事でないことを理解させ、いじめを知らせる勇気を持たせる。
また、傍観は、いじめ行為への加担と同じであることに気付かせる。
(オ)学級全体への対応
次の点に留意し、いじめの早期発見、早期対応、早期解消に努める。
・ 話し合いなどを通して、いじめを考える。
・ 見て見ぬふりをしないよう指導する。
・ 自らの意志によって、行動がとれるように指導する。
・ いじめは許さないという断固たる教師の姿勢を示す。
・ 道徳教育の充実を図る。
・ 特別活動を通して、好ましい人間関係を築く。
・ 行事等を通して、学級の連帯感を育てる。
(カ)いじめの解消
いじめは、単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない。いじめが「解
消している」状態とは、少なくとも次の二つの要件が満たされている必要がある。
ただし、これらの要件が満たされている場合であっても、必要に応じ、他の事情
も勘案して判断するものとする。
①いじめに係る行為が止んでいること
被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じ
て行われるものを含む)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。
この相当の期間とは、少なくとも3か月を目安とする。
※ただし、いじめの被害の重大性等から更に長期の期間が必要であると判断される
場合は、この目安にかかわらず、学校の設置者又は学校いじめ対策組織の判断に
より、より長期の期間を設定するものとする。学校の教職員は、相当の期間が経
過するまでは、被害・加害児童の様子を含め状況を注視し、期間が経過した段階
で判断を行う。行為が止んでいない場合は、改めて、相当の期間を設定して状況
を注視する。
②被害児童が心身の苦痛を感じていないこと
いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、被害児童がい
じめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。被害児童本人及び
その保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。
学校は、いじめが解消に至っていない段階では、被害児童を徹底的に守り通し、そ
の安全・安心を確保する責任を有する。学校いじめ対策組織においては、いじめが
解消に至るまで被害児童の支援を継続するため、支援内容、情報共有、教職員の役
割分担を含む対処プランを策定し、確実に実行する。
※いじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎず「解消して
いる」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性が十分にあり得ることを
踏まえ、学校の教職員は、当該いじめの被害児童及び加害児童については、日常
的に注意深く観察する必要がある。
4 重大事態への対処
(1)重大事態の意味
学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下 「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設 け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係 を明確 にするための調査を行うものとする。
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、前項の規定による調査を行ったときは、当該
調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事
実関係等その他の必要な情報を適切に提供するものとする。
3 第1項の規定により学校が調査を行う場合においては、当該学校の設置者は、同項の
規定による調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び 支援を行うも
のとする。(法第28条)
○ 法第28条第1項第一号の「生命、心身又は財産に重大な被害」については、い
じめを受ける児童の状況に着目して判断する。例えば、
・児童が自殺を企図した場合 ・身体に重大な傷害を負った場合
・金品等に重大な被害を被った場合 ・精神性の疾患を発症した場合
○ 法第28条第1項第二号の「相当の期間」については、不登校の定義を踏まえ、
年間30日を目安とする。ただし、児童が一定期間、連続して欠席しているような
場合には、上記の目安にかかわらず、市教育委員会又は学校の判断により、迅速に調
査に着手する。
○ 児童や保護者からいじめられて重大事態に至ったというという申立てあったとき
は、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」
と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる。
○ 学校の設置者及び学校は、詳細な調査を行わなければ、事案の全容は分からないと
いうことを第一に認識し、軽々に「いじめはなかった」、「学校に責任はない」とい
う判断はしない。
(2)報告
○ 重大事態が発生した場合、速やかに市教育委員会に報告する。報告を受けた市教
育委員会は、市長及び県教育委員会へ、事態発生について報告する。
(3)調査の実施
① 調査の趣旨及び調査主体
○ 法第28条の調査は、重大事態に対処するとともに、同種の事態の発生の防止に資
するために行うものである。
○ 桜山小学校は、重大事態が発生した場合、直ちに市教育委員会に報告し、学校が主
体となって調査を行う。ただし、従前の経緯や事案の特性、いじめられた児童又は保
護者の訴えなどを踏まえ、学校主体の調査では、重大事態への対処及び同種の事態の
発生の防止に必ずしも十分な結果を得られないと市教育委員会が判断する場合や、学
校の教育活動に支障が生じるおそれがあるような場合には、市教育委員会において調
査をする。
○ 桜山小学校が調査主体となる場合、法第28条第3項に基づき、市教育委員会は
調査を実施する学校に対して必要な指導、また、人的措置も含めた適切な支援を行
う。
② 調査を行うための組織
○ 桜山小学校は、その事案が重大であると判断したときは、当該重大事態に係る調査
を行うため、速やかにその下に組織を設けるものとする。
○ 桜山小学校が調査主体となる場合は、法第22条の「いじめの防止等の対策のため
の組織」を、調査を行うための組織とする。
③ 事実関係を明確にするための調査の実施
○ 「事実関係を明確にする」とは、重大事態となったいじめ行為が、
・いつ(いつ頃から) ・誰から行われ ・どのような態様であったか
・いじめを生んだ背景事情や児童の人間関係にどのような問題があったか
・学校・教職員がどのように対応したか
などの事実関係を、可能な限り網羅的に明確にすることである。この際、因果関係の
特定を急ぐことなく、客観的な事実関係を速やかに調査する。
○ この調査は、民事・刑事上の責任追及やその他の訴訟等への対応を直接の目的と
するものではないことは言うまでもなく、学校と市教育委員会が事実に向き合うこと
で、当該事態の対処や同種の事態の発生防止を図るものである。
ア いじめられている児童からの聴き取りが可能な場合
○ いじめられている児童から十分に聴き取るとともに、在籍児童や教職員に対する質問
紙調査や聴き取り調査などを行うことが考えられる。
○ この際、いじめられた児童や情報を提供してくれた児童を守ることを最優先とした
調査実施が必要である(例えば、質問票の使用に当たり個別の事案が広く明らかにな
り、被害児童の学校復帰が阻害することのないよう配慮する等)。
○ 調査による事実関係の確認とともに、いじめた児童への指導を行い、いじめ行為を
止める。
○ いじめられた児童に対しては、事情や心情を聴取し、その状況にあわせた継続的な
ケアを行い、落ち着いた学校生活復帰の支援や学習支援等を行う。
○ これらの調査を行うに当たっては、事案の重大性を踏まえて、市教育委員会がより
積極的に指導・支援したり、関係機関ともより適切に連携したりして、対応に当た
る。
イ いじめられている児童からの聴き取りが不可能な場合
○ 児童の入院や死亡など、いじめられている児童からの聴き取りが不可能な場合は、
当該児童の保護者の要望・意見を十分に聴取し、迅速に当該保護者に今後の調査につ
いて協議し、調査に着手する。調査方法としては、在籍児童や教職員に対する質問紙
調査や聴き取り調査などが考えられる。
ウ 自殺の背景調査における留意事項
○ 児童の自殺という事態が起こった場合の調査の在り方については、その後の自殺防
止に資する観点から、自殺の背景調査を実施することが必要である。この調査におい
ては、亡くなった児童の尊厳を保持しつつ、その死に至った経過を検証し再発防止策
を講ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮しながら行うことが必要である。
○ いじめがその要因として疑われる場合の背景調査については、法第28条第1
項に定める調査に相当することとなり、その在り方については、以下の事項に留意の
上、「児童生徒の自殺が起きたときの調査の指針」(平成23年3月児童生徒の自殺
予防に関する調査研究協力者会議)を参考とするものとする。
・ 背景調査に当たり、遺族が、当該児童を最も身近に知り、また、背景調査につい
て切実な心情を持つことを認識し、その要望・意見を十分に聴取するとともに、でき
る限りの配慮と説明を行う。
・ 在校生及びその保護者に対しても、できる限りの配慮と説明を行う。
・ 死亡した児童が置かれていた状況として、いじめの疑いがあることを踏まえ、
学校は、遺族に対して主体的に、在校生へのアンケート調査や一斉聴き取り調査を含
む詳しい調査の実施を提案する。
・ 詳しい調査を行うに当たり、学校は、遺族に対し 調査の目的・目標、調査を行
う組織の構成等、調査の概ねの期間や方法、入手した資料の取り扱い、遺族に対する
説明の在り方や調査結果の公表に関する方針などについて、できる限り、遺族と合意
しておくことが必要である。
・ 調査を行う組織については、調査審議会とする。
・ 背景調査においては、自殺が起きた後の時間の経過等に伴う制約の下で、できる
限り、偏りのない思慮や情報を多く収集し、それらの信頼性の吟味を含めて、客観的
に、特定の資料や情報のみ依拠することなく総合的に分析評価を行うよう努める。
・ 客観的な事実関係の調査を迅速に進めることが必要であり、それらの事実の影響
についての分析評価については、専門的知識及び経験を有する者の援助を求めること
が必要であることに留意する。
・ 学校が調査を行う場合においては、市教育委員会情報の提供について必要な指導
及び支援を行うこととされており、市教育委員会の適切な対応が求められる。
・ 情報発信・報道対応については、プライバシーへの配慮の上、正確で一貫した情
報提供が必要であり、初期の段階で情報がないからといってトラブルや不適切な対応
がなかったと決めつめたり、断片的な情報で誤解を与えたりすることのないよう留意
する。なお、亡くなった児童の尊厳の保持や子供の自殺は連鎖(後追い)の恐れがあ
ることなどを踏まえ、報道の在り方に特別の注意が必要であり、WHO(世界保健機
関)による自殺報道への提言を参考にする必要がある。
エ その他留意事項
○ 事案の重大性を踏まえ、市教育委員会は、義務教育段階の児童に関して、出席停
止措置の活用や、いじめられた児童又はその保護者が希望する場合には、就学校の指
定の変更や区域外就学等の弾力的な対応を検討する。
○ 重大事態が発生した場合に、関係のあった児童が深く傷つき、学校全体の児童や
保護者や地域にも不安や動揺が広がったり、時には事実に基づかない風評等が流れた
りする場合もある。学校は、児童や保護者への心のケアと落ち着いた学校生活を取り
戻すための支援に努めるとともに、予断のない一貫した情報発信、個人のプライバシ
ーへの配慮に留意する。
(4)調査結果の提供及び報告
① いじめを受けた児童及びその保護者に対する情報を適切に提供する責任
○ 法第28条第2項に基づき、学校は、いじめを受けた児童やその保護者に対して、
調査により明らかになった事実関係について説明する。これらの情報提供に当たって
は、他の児童のプライバシー保護に配慮するなど、関係者の個人情報に十分配慮し、
適切に提供する。ただし、いたずらに個人情報保護を楯に説明を怠るようなことがあ
ってはならない。
② 調査結果の報告
○ 調査結果について、市教育委員会は市長及び県教育委員会に報告する。
○ 上記①の説明の結果を踏まえて、いじめを受けた児童又はその保護者が希望する場
合には、いじめを受けた児童又はその保護者の所見をまとめた文書の提供を受け、調
査結果の報告に添えて市長及び県教育委員会に送付する。